ケーブルテレビを契約していると、テレビの横に設置されるSTB(セットトップボックス)。「この機器は本当に必要なのだろうか?」と、疑問に感じたことはありませんか。特に、月額料金の明細を見て、STBのレンタル料金が気になっている方も多いはずです。
そもそも、ケーブルテレビのSTBとは一体何なのか、またSTBの価格相場はどのくらいなのでしょうか…
JCOMのような大手サービスではSTBが不要になるケースはあるのか、そして、もし不要なのであればケーブルテレビのSTBは自分で設置できるのか、あるいは市販で購入可能なのかといった疑問も浮かびます。
さらに、BS放送の視聴を希望する場合、ケーブルテレビはSTBなしでもBSが見れるのか、その鍵となるBSパススルーサービスのメリットデメリットについても知っておきたいところです。
住居形態によっても状況は異なり、戸建てとマンションではSTBに違いはあるのか、複数テレビがある場合に全てSTBが必要になるのかという点も、多くの方が抱える悩みです。

この記事では、ケーブルテレビのSTBが不要になる条件から、契約や設備の注意点まで、専門的かつ分かりやすく解説していきます。
【記事のポイント】
1.STBが不要になる、ケーブルテレビの契約形態
2.STBなしでBS放送を視聴するための、具体的な方法
3.戸建てやマンションなど、住居形態による違い
4.STBを返却・減設する際の、具体的な注意点
ケーブルテレビでSTB不要になる条件とは?


- ケーブルテレビのSTB(セットトップボックス)とは
- 戸建てとマンションではSTBに違いはある?
- 複数テレビがある場合に全てSTBが必要?
- ケーブルテレビはSTBなしでもBSが見れる?
- BSパススルーサービスのメリットデメリット
ケーブルテレビのSTB(セットトップボックス)とは


ケーブルテレビのSTB(セットトップボックス)とは、ケーブルテレビ局から送られてくる放送信号を受信し、ご家庭のテレビで視聴できる形に変換するための専用チューナーです。
特に、BS放送やCS放送(専門チャンネル)など、地上デジタル放送以外の多彩なチャンネルを楽しむために必要となる機器だと考えてください。
STBの主な役割
STBの役割は、大きく分けて二つあります。
1.信号の交換
一つは、「信号の変換」です。ケーブルテレビ局は、限られた伝送帯域で多くのチャンネルを送信するため、BS/CS放送の電波を独自の方式(トランスモジュレーション方式)に変換して送ることが一般的です。
テレビに内蔵されているBS/CSチューナーは、この変換された信号を直接受信できないため、STBが元の信号に戻す役割を担います。
2.契約管理
もう一つの役割は、「契約管理」です。有料チャンネルの視聴契約情報を、STBに挿入されているC-CASカードなどで管理し、契約者だけが視聴できるように制御しています。
要するに、地上デジタル放送以外の専門的なチャンネルを視聴したい場合には、このSTBが不可欠になるケースが多いということです。



逆に言えば、地上デジタル放送のみの視聴であれば、STBが不要になる可能性があります。
戸建てとマンションではSTBに違いはある?


戸建てとマンション(集合住宅)では、ケーブルテレビの契約形態や設備導入の経緯が異なるため、STBの必要性にも違いが出てくる場合があります。
戸建ての場合
戸建ての場合は、個人でケーブルテレビ局と直接契約を結びます。そのため、どのようなサービスを契約するかによってSTBの有無が決まります。例えば、地上デジタル放送のみの最もシンプルなプランを選べば、STBなしで契約できるケーブルテレビ局もあります。
しかし、BS/CS放送を含む多チャンネルプランを契約する場合は、前述の通り、信号変換と契約管理のためにSTBの設置が必須となるのが一般的です。
マンション(集合住宅)の場合
マンションの場合は、建物全体でケーブルテレビが一括導入されているケースが多く見られます。この場合、契約形態は大きく二つに分かれます。
一つは、管理組合などが建物全体で契約し、全戸で地上デジタル放送が視聴できる状態になっているパターンです。この場合、各部屋のアンテナ端子にテレビを繋ぐだけで、STBなしで地デジを視聴できます。これは、マンションの共聴設備がケーブルテレビの信号に対応しているためです。
もう一つは、BS/CS放送などの追加チャンネルを視聴したい住民が、個別でケーブルテレビ局と追加契約を結ぶパターンです。この際には、個別にSTBをレンタルし、部屋に設置する必要があります。



したがって、お住まいが戸建てかマンションかによって、初期の契約状態が異なるため、STBの必要性も変わってくると言えます。
複数テレビがある場合に全てSTBが必要?


ご家庭にテレビが複数台ある場合、「全てのテレビにSTBを設置しなければならないのか?」という、疑問が生じます。この答えは、視聴したい放送の種類によるとなります。
地上デジタル放送のみを視聴する場合
地上デジタル放送は、ケーブルテレビ局から「パススルー方式」という、アンテナで受信する電波と同じ形式で送信されていることがほとんどです。このため、STBを設置していない2台目、3台目のテレビでも、壁のアンテナ端子に接続するだけで地上デジタル放送を視聴できます。
BS/CS放送を複数のテレビで視聴する場合
BS/CS放送も複数のテレビで見たい場合は、原則として視聴したいテレビの台数分だけSTBが必要になります。STBは1台のテレビにしか接続できないため、別のテレビでBS/CS放送を見るには、追加のSTBをレンタル(追加契約)しなければなりません。
ただし、後述する「BSパススルー」サービスに対応しているケーブルテレビ局で、かつご家庭の設備が対応していれば、STBなしで複数のテレビでBS放送を視聴できる場合があります。
CSの専門チャンネルについては、多くの場合、視聴するテレビごとにSTBが必要になると考えておくとよいでしょう。



このように、テレビの台数と視聴したい放送内容の組み合わせによって、必要なSTBの数が変わる点を理解しておくことが大切です。
ケーブルテレビはSTBなしでもBSが見れる?


ケーブルテレビでBS放送を視聴する場合、必ずしもSTBが必要というわけではありません。STBなしでBS放送を見るための鍵となるのが、「BSパススルー」という伝送方式です。
伝送方式の違いを理解する
ケーブルテレビにおけるBS放送の伝送方式には、主に2つの種類があります。
方式名 | 概要 | STBの必要性 |
---|---|---|
トランスモジュレーション方式 | BS放送の信号を局で独自の周波数・形式に変換して送信。長距離伝送向き。 | 必要 |
BSパススルー方式 | BS衛星の信号を変換せず、そのまま送信。 | 不要 |
従来の同軸ケーブルを使ったケーブルテレビサービスでは、技術的な制約からトランスモジュレーション方式が主流でした。この方式では、テレビ内蔵のBSチューナーでは信号を解読できないため、専用のSTBが不可欠でした。
一方、近年主流となっている光回線(FTTH)を利用したケーブルテレビサービスでは、広帯域伝送が可能になったため、BSパススルー方式が採用されるケースが増えています。
この方式であれば、ご家庭のテレビやレコーダーにBSチューナーが内蔵されていさえすれば、STBを介さずに直接BS放送の視聴や録画が可能です。



したがって、お住まいのケーブルテレビが光回線(FTTH)で、かつBSパススルーサービスを提供していれば、STBなしでBS放送を楽しむことができます。
BSパススルーサービスのメリットデメリット


STBなしでBS放送を視聴できる、BSパススルーサービスは非常に魅力的ですが、メリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。契約を検討する際は、両方を理解しておくことが肝心です。
BSパススルーのメリット
1.STBが不要になる
最大のメリットは、STBという機器が不要になる点です。これにより、テレビ周りの配線がスッキリし、リモコンもテレビやレコーダーのものだけで済むため、操作がシンプルになります。
2.家中のテレビでBS視聴が可能に
STBは1台のテレビにしか接続できませんが、パススルー方式であれば、宅内配線を通じて家中のBSチューナー内蔵テレビでBS放送を視聴できます。テレビが増えても追加料金はかかりません。
3.録画が容易になる
レコーダーに内蔵されているBSチューナーで直接録画できるため、番組表からの録画予約などが簡単に行えます。STB経由の録画で発生しがちな複雑な設定や接続は不要です。
BSパススルーのデメリットと注意点
1.光回線(FTTH)契約が前提
前述の通り、BSパススルーは主に光回線を利用したサービスです。現在、同軸ケーブルでケーブルテレビを利用している場合は、光回線への切り替え工事が必要となり、工事費用が発生する可能性があります。
2.宅内設備の確認が必要
BS放送の電波は、地上デジタル放送よりも高い周波数帯を使用します。そのため、宅内の同軸ケーブルや分配器、壁のアンテナ端子などが古い場合、BSの周波数に対応しておらず、信号が減衰して映らないことがあります。この場合、宅内設備の改修が必要になることも考えられます。
3.全てのケーブルテレビ局が対応しているわけではない
お住まいの地域をカバーするケーブルテレビ局が、BSパススルーサービスを提供しているとは限りません。契約前に、必ずサービス内容を確認する必要があります。



これらの点を踏まえると、BSパススルーは非常に便利なサービスですが、利用するにはご自身の住環境や契約内容が条件を満たしているかを、確認することが不可欠です。
ケーブルテレビをSTB不要で契約する注意点


- ケーブルテレビのSTBは市販で購入可能?
- ケーブルテレビのSTBは自分で設置できる?
- STB(セットトップボックス)の価格相場
- J:COMならSTBは不要なのか?
- ケーブルテレビのSTBに関するよくある質問
ケーブルテレビのSTBは市販で購入可能?


「レンタル料がかかるなら、STBを市販で購入して使えないだろうか?」と、考える方もいるかもしれません。
この問いに対する答えは、ほぼ不可能です。ケーブルテレビのSTBは、一般の家電量販店やオンラインショップでは販売されていません。その理由は、STBが単なるチューナーではなく、ケーブルテレビ局のサービスと密接に連携した専用機器であるためです。
STBには、視聴契約情報を管理するためのC-CASカードが挿入されており、このカードとSTB本体の固有IDがケーブルテレビ局のシステムに登録されて初めて、BS/CS放送などが視聴できるようになります。
仮にオークションサイトなどで中古のSTBを入手したとしても、ケーブルテレビ局側で登録作業を行わない限り、単なる箱に過ぎず、放送を視聴することはできません。
また、ほとんどのケーブルテレビ局では、自社が提供するSTB以外の機器の接続(持ち込み)を認めていません。これは、ネットワーク全体の品質やセキュリティを維持するためです。



これらの理由から、STBはケーブルテレビ局からレンタルで提供されるのが基本であり、市販品を購入して利用するという選択肢はないと理解しておく必要があります。
ケーブルテレビのSTBは自分で設置できる?


STBの設置作業については、ケーブルテレビ局やSTBの機種によって対応が異なります。
専門業者による設置が基本
多くの場合、新規契約時やSTBの交換時には、ケーブルテレビ局の専門スタッフまたは提携業者が訪問し、設置作業を行います。これは、信号レベルの測定や最適な接続設定など、安定した視聴品質を確保するために専門的な知識が必要となるためです。
特に、インターネットや電話サービスも同時に契約する場合、全体の接続設定が複雑になるため、専門家による作業が推奨されます。
自分で設置できるケース
一方で、2台目のSTBを追加する場合や、一部のシンプルな機能を持つSTBへの交換などのケースでは、利用者自身での設置が可能な場合もあります。その際は、詳しい接続マニュアルが同梱されており、それに従って配線作業を行うことになります。
ただし、自分で設置できるとされている機種でも、配線に自信がない場合や、接続後にうまく映らないといったトラブルが発生した場合は、結局サポートセンターに連絡し、場合によっては訪問サポート(有料)を依頼することになります。



もし自身での設置を検討する場合は、契約しているケーブルテレビ局のウェブサイトで対応機種や手順を確認するか、カスタマーサポートに問い合わせて、自己設置が可能かどうかを事前に確認することが大切です。
STB(セットトップボックス)の価格相場


STBは市販されていないため、購入価格という概念はありません。利用者はケーブルテレビ局からレンタルする形になり、その対価として月額の「レンタル料金(利用料金)」を支払うのが一般的です。
このレンタル料金は、STBの機能によって大きく異なります。
STBの機能と料金の目安
1.基本モデル(BS/CS視聴のみ)
最もシンプルな機能を持つ、STBです。月額料金は、数百円〜1,000円程度が相場となります。
2.録画機能付きモデル(HDD内蔵/外付けHDD対応)
本体にハードディスクを内蔵しているか、外付けUSBハードディスクを接続して番組録画ができる高機能モデルです。利便性が高い分、レンタル料金も高めに設定されており、月額1,000円〜2,000円程度が目安です。
3.4K放送対応モデル
BS4K放送などの高精細な映像に対応した最新モデルです。最も高機能なため、レンタル料金も最も高く、月額1,500円以上になることが多く見られます。
これらの料金は、ケーブルテレビの基本利用料に上乗せして請求されます。そのため、STBが不要になれば、このレンタル料金分を節約できることになります。



STBの減設や返却を検討する際は、現在契約しているSTBの機種とレンタル料金を確認し、どれくらいのコスト削減に繋がるかを把握すると良いでしょう。
J:COMならSTBは不要なのか?


国内最大手のケーブルテレビ事業者である、J:COM(ジェイコム)を契約している、あるいは検討している方にとって「J:COMでもSTBなしで利用できるのか?」は、重要なポイントです。
J:COMのサービスにおいても、STBが不要になるケースは存在します。ただし、それは視聴したい放送の種類と契約プランに依存します。
地デジ・BSプランの場合
J:COMでは、光回線を利用した「J:COM NET 光 on au ひかり」などのサービスとテレビサービスを組み合わせることで、BSパススルーに対応している場合があります。これにより、地上デジタル放送とBSデジタル放送であれば、STBなしで視聴することが可能です。
多チャンネル(CS放送)を視聴する場合
一方、多彩な専門チャンネルを含む「J:COM TV」のスタンダードプランやフレックスプランなどを契約する場合は、CS放送の信号受信と契約管理のために、専用のSTB(J:COM LINKなど)の設置が必須となります。
STBを減設・返却する手続き
もし現在J:COMを利用していて、CS放送をほとんど見ていないためにSTBを1台減らしたい、あるいは全て返却したいと考える場合は、J:COMのカスタマーセンターに連絡するか、マイページから手続きを行うことで減設が可能です。手続き後、専門スタッフが機器の回収に訪れます。



このようにJ:COMであっても、契約内容次第でSTBが不要になる選択肢はありますが、多くの専門チャンネルを楽しみたい場合は、STBがセットになっていると考えるのが適切です。
ケーブルテレビのSTBに関するよくある質問


ここでは、ケーブルテレビのSTBについて、これまで解説した内容以外でよく寄せられる質問とその回答をまとめます。
- STBを返却したら、NHKの受信料はどうなりますか?
-
STBを返却し、BS放送が視聴できない環境(BSパススルーもない状態)になった場合、NHKとの契約を「衛星契約」から「地上契約」に変更できます。これにより、NHKの受信料を安くすることが可能です。手続きは、ご自身でNHKに連絡して行う必要があります。ケーブルテレビ局が代行してくれるわけではない点に注意してください。
- STB経由の録画と、レコーダーでの直接録画は何が違いますか?
-
STBに接続したHDDで録画した場合、その録画番組は基本的にそのSTBでしか再生できません。また、DVDやブルーレイディスクにダビングするには、「LAN録画(LANダビング)」という複雑な設定が必要になる場合があります。一方、パススルー方式でレコーダーのチューナーを使って直接録画すれば、ディスクへのダビングも簡単で、機器の買い替え時にも録画データを引き継ぎやすいという利点があります。
- STBのリモコンが使いにくいのですが…
-
STBのリモコンは、テレビ、STB、場合によってはレコーダーと、複数の機器を操作する必要があるため、ボタンが多く複雑になりがちです。STBが不要になれば、テレビやレコーダー本来のシンプルなリモコンだけで操作が完結するため、日々のストレスが軽減されるというメリットも考えられます。



よくあるQ&Aも、参考にしてください。
【総括】ケーブルテレビのSTB不要条件のポイント
この記事では、ケーブルテレビのSTBが不要になる条件や、それに伴うメリット、注意点について詳しく解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- STBはBSやCS放送を視聴するための、専用チューナー
- 地上デジタル放送は、STBなしで視聴できる場合が多い
- STBの主な役割は、信号変換と有料放送の契約管理
- STBはケーブルテレビ会社からの、レンタルが基本
- STBの持ち込みや、市販品の利用は原則として不可
- STBの月額レンタル料は、機能により数百円から数千円
- 同軸ケーブルでは、BS視聴にSTBが必須なことが多い
- 光回線(FTTH)なら、BSパススルーに対応している可能性がある
- BSパススルーなら、市販テレビのチューナーでBSを直接視聴できる
- BSパススルーの利用には、宅内設備の確認が必要な場合がある
- 複数のテレビでBSを見る場合も、BSパススルーならSTBは不要
- CS放送を複数のテレビで見るには、通常テレビごとにSTBが必要
- J:COMでもプランによっては、STBなしでの契約が可能
- STBを返却すれば、NHK受信料を衛星契約から地上契約に変更できる
- STBが不要になると、テレビ周りの配線やリモコン操作が簡素化される