毎日の料理でどうしても気になってしまうのが、コンロと壁、あるいはコンロと調理台の間に空いているあの微妙な隙間ですよね。野菜の切れ端が落ちてしまったり、炒め物の油が飛び散ってベタベタになったりすると、掃除をするのも一苦労です。
「いっそのこと、ここを何かで埋めてしまいたい…」と考えるのは、キッチンに立つ人なら誰しも一度は抱く願いではないでしょうか。
私自身、かつてはその隙間を収納スペースに変えようと、ホームセンターで買ってきた適当な部材を詰め込んでいた時期がありました。しかしある日、掃除のためにそれをどかしてみると、熱で変形し、裏側が焦げているのを見て背筋が凍る思いをしたことがあります。
それ以来、私はたかが隙間と侮らず、キッチンの安全工学や素材の化学的特性について徹底的に調べるようになりました。
ジローこの記事では、見た目をスッキリさせるだけでなく正しい隙間対策と、掃除の手間を極限まで減らすためのノウハウを余すところなくお伝えします。
【記事のポイント】
1.消防法や火災予防条例に基づいた、安全な離隔距離の確保ルール
2.重合した油汚れを防ぎ、掃除を楽にする素材選びの化学的根拠
3.ダイソーやセリアなどの100均グッズを使った、コスパ最強の対策
4.賃貸物件でも壁を傷つけずに、収納を増やす原状回復可能なDIY術
コンロ横の隙間を安全に埋めるための基礎知識


隙間を埋めるという行為は、単に物を置く場所を作ることではありません。そこは高温の熱源に隣接し、可燃性の油が飛び散る、家の中で最も過酷な環境(エンバイロメント)です。まずはDIYを始める前に、必ず知っておくべき安全上のルールと、やってはいけないNG行為について、理論的な背景を含めて詳しく解説します。
- 火事や低温着火の危険性を理解する
- プラダンで隙間を塞ぐのは避ける
- 賃貸でも安心な原状回復できる対策
- 油汚れ防止に最適な素材の選び方
- ラックやガードを置く正しい距離
火事や低温着火の危険性を理解する
コンロ周りの収納や隙間埋めを考える際、最も警戒すべきは火災リスクです。多くの方が、火が直接当たらなければ燃えないと考えていますが、実は火が触れていなくても火災は発生します。それが、「低温着火(Low-Temperature Ignition)」と呼ばれる現象です。
低温着火とは、木材や壁紙などの可燃物が、通常の発火点よりもはるかに低い温度(約100℃〜)で長時間加熱され続けることで、内部から変質し発火に至る現象を指します。
調理のたびにコンロからの輻射熱を受け続けると、木材の水分が蒸発して過乾燥状態になり、やがて成分が熱分解を起こして「燻焼炭(くんしょうたん)」のような炭化物が生成されます。この炭化物は熱を蓄積しやすく、ある日突然、酸素と反応して火種もないのに自然発火するのです。
恐ろしいのは、表面にステンレス板やタイルを貼って「防火対策」をしたつもりでも、その裏にある木材や下地材には熱が伝わっている点です。消防庁の資料でも、防熱板の裏側で壁内の木材が炭化し、火災に至った事例が報告されています。
絶対に守るべき離隔距離
消防法および火災予防条例では、ガスコンロの周囲に以下の空間(離隔距離)を確保することが推奨されています。
- 側面(横):可燃物から15cm以上
- 上方:可燃物から100cm(または80cm)以上
(出典:東京消防庁『STOP!住宅火災』)
このコンロ横15cmのエリアは、いわば「火気厳禁の聖域(Forbidden Zone)」です。



ここにプラスチック製品や、防火処理されていない木材を置くことは、法的なリスクだけでなく、生命に関わる危険な行為だと認識してください。
プラダンで隙間を塞ぐのは避ける


DIY初心者にとって、「プラダン(プラスチックダンボール)」は加工が簡単で価格も安く、非常に魅力的な素材に見えます。カッターで切って隙間にハメ込めば、汚れ防止カバーの完成と紹介しているSNSの投稿も見かけますが、これはコンロ横においては絶対に避けるべき危険な手法です。
プラダンの主原料であるポリプロピレン(PP)の耐熱温度は、グレードにもよりますが一般的に100℃〜120℃程度です。コンロを使用中、鍋からの輻射熱や、排気口から出る熱風は容易にこの温度域に達します。
結果として、プラダンが熱で軟化してぐにゃぐにゃに変形したり、最悪の場合は溶けてドロドロになり、高温のコンロ機器に付着して引火する恐れがあります。
また、衛生面でも問題があります。
プラスチックは静電気を帯びやすい性質があるため、空気中を漂う微細な油の粒子(オイルミスト)とホコリを強力に吸着します。これらが混ざり合うと、ベトベトした頑固な汚れとなり、水拭き程度では落ちなくなります。



変形のリスクと清掃の難しさを考慮すると、プラダンは「火の気のない場所」での使用に留めるのが賢明です。
賃貸でも安心な原状回復できる対策
賃貸住宅にお住まいの場合、壁にビスを打てない・接着剤跡を残せないという制約が、隙間活用の大きなハードルになります。しかし、諦める必要はありません。「マスキングテープ」と「強力両面テープ」を組み合わせた工法を使えば、壁を無傷で守りながら、しっかりと収納を固定することが可能です。
マステ+両面テープ工法の手順
壁紙やキッチンの側面に、幅広のマスキングテープを貼ります。このとき、汚れや水分を完全に拭き取っておくことが重要です。
マスキングテープの上に、同幅の強力両面テープ(建材用など)を重ねて貼ります。
その上から、自作した棚や隙間埋めパーツを押し付けて固定します。
撤去する際は、一番下のマスキングテープごとゆっくり剥がせば、壁紙を傷つけずに元通りになります。
また、空間を縦に使いたい場合は「突っ張り棒」が有効ですが、1本では不安定です。レンジフードのフチとキッチントップの間に2本の突っ張り棒を渡し、その間にワイヤーネットを結束バンドで固定する方法がおすすめです。



これなら、地震の揺れでも倒れにくい強固な壁面収納を、釘一本打たずに作り出すことができます。
油汚れ防止に最適な素材の選び方


キッチン、特にコンロ周りの掃除を楽にするための鍵は、「油汚れの化学変化」に対応できる素材を選ぶことです。調理中に飛び散った油は、時間が経つと酸素と反応して酸化し、さらに熱によって重合という反応を起こして、樹脂のように硬い汚れに変化します。このガンコな汚れを落とすには、アルカリ性の洗剤が必要不可欠です。
しかし、素材によってはこのアルカリ洗剤が使えないものがあります。以下に、コンロ横に適した素材の科学的な評価をまとめました。
| 素材 | 耐熱性 | 耐薬品性(アルカリ) | 特徴・評価 |
|---|---|---|---|
| ステンレス(SUS304等) | ◎ 極めて高い | ◎ 強い | 【推奨】 業務用の厨房でも使われる最強の素材。錆びにくく、強力なアルカリ電解水でゴシゴシ拭いても腐食しません。 |
| スチール(粉体塗装) | ○ 約200℃ | ○ 塗膜による | 【良】 Tower製品などで採用。厚い樹脂塗膜が金属を守りますが、傷がつくとそこから錆びる可能性があります。 |
| アルミニウム | △ 約600℃ | × 腐食する | 【注意】 アルミはアルカリに弱く、化学反応(2Al + 2NaOH…)を起こして溶解・黒変化・白化します。重曹やセスキ炭酸ソーダが使えません。 |
| 木材・プラスチック | × 低い | △ 吸い込む | 【不可】 熱に弱く、油汚れが繊維の奥まで浸透するため、表面だけ拭いてもニオイやベタつきが取れません。 |
特にDIYでよく使われるアルミテープやアルミ製のレンジガードは、掃除の際にうっかり「アルカリ電解水」を吹きかけると、化学反応で表面がボロボロになり、白い粉を吹いてしまいます。



メンテナンスの手間を最小限にしたいなら、迷わずステンレス製を選ぶのが正解です。
ラックやガードを置く正しい距離
市販の隙間収納ラックや排気口カバーを設置する際、製品のサイズが合うかどうかだけでなく、「排気口の位置」を絶対に確認してください。特にIHクッキングヒーターやビルトインガスコンロには、後方にグリル用の排気口があります。
魚焼きグリルを使用中、この排気口からは非常に高温の熱風が吹き出します。もし、ラックやカバーでここを完全に塞いでしまうと、熱の逃げ場がなくなり、コンロ機器内部の温度が異常上昇します。これ安全装置が作動して調理が止まる原因になるだけでなく、電子部品の故障や、最悪の場合は内部発火につながるリスクがあります。
排気口カバー選びの必須条件
- 可動式であること: グリル使用時に、パタンと倒したりスライドさせたりして、排気口を完全に開放できるタイプを選びましょう。
- 形状: 三角屋根型(傾斜タイプ)は油ハネを防ぎやすいですが、上に物を置けません。フラットタイプは物を置けますが、グリル使用時は必ず物を退かす必要があります。



「IHすきまガード」のようなシリコンゴム製品をフチに巻く場合も、排気口の上には絶対に被せないように注意してください。
コンロ横の隙間を埋める便利グッズとDIY


ここまでは守りの知識をお伝えしましたが、ここからは攻めの実践編です。数ある商品やアイデアの中から、安全性と機能性をクリアした信頼できるソリューションだけを厳選しました。ご自身の予算やキッチンのスタイルに合わせて選んでみてください。
- 100均ダイソー等のコスパ最強製品
- ニトリやTowerの実用的な収納
- 無印良品で揃える清潔なキッチン
- ぴったりサイズに自作するDIY
- おしゃれに空間を活用するアイデア
- 【総括】コンロ横の隙間を埋める最適解
100均ダイソー等のコスパ最強製品
まずは安く済ませたいという方にとって、ダイソーやセリア、キャンドゥなどの100円ショップは宝の山です。中でも、コンロ周りの隙間対策として神アイテムと名高いのが、ダイソーの「IHすきまガード」です。
これは、IHクッキングヒーターのガラストッププレートと、システムキッチンの天板との間にできるわずかな溝に埋め込む、紐状のシリコーンゴムです。この溝にはゴミや水気が入り込みやすく、一度入ると爪楊枝でも取りにくい厄介な場所です。IHすきまガードを設置することで、汚れを物理的にシャットアウトできます。
失敗しない取り付けのコツ
シリコンゴムを引っ張りすぎないことがポイントです。強く引っ張りながら埋め込むと、時間が経って縮んだ時に角の部分が浮いてきてしまいます。角(コーナー)の部分は特に慎重に、押し込むようにしてフィットさせると綺麗に仕上がります。
また、100均のワイヤーネットを使って棚を自作する方も多いですが、ここでも注意が必要です。通常、ワイヤーネット同士をつなぐには結束バンドを使いますが、コンロ横で使用する場合、ナイロン製の結束バンドは熱で硬化・劣化し、ある日突然パチンと切れるリスクがあります。



必ずホームセンター等で売っている「金属製の連結ジョイント」や、ステンレス製のクリップを使用してください。
ニトリやTowerの実用的な収納


DIYは苦手だけど、しっかりしたものが欲しいという方には、山崎実業の「Tower(タワー)」シリーズや、ニトリの既製品が最適解です。これらは日本の住宅事情を徹底的に研究して作られており、サイズ感や機能性が段違いです。
山崎実業 Tower「コンロ奥隙間ラック」
この製品の素晴らしい点は、棚板が3分割されているところです。ガスの元栓がコンロの奥にある場合、一体型の棚だと元栓操作のたびに棚全体を動かす必要がありますが、Towerのラックなら元栓の上の板だけをパカッと開けることができます。素材も粉体塗装されたスチール製で、熱に強く、ずっしりとした安定感があります。
ニトリ「コンロ横ラック」
ニトリ製品の強みは、コストパフォーマンスと「適材適所」の素材使いです。コンロ横ラックの中には、フレームは丈夫なスチール製、汚れやすい棚板部分は洗いやすいステンレス製というハイブリッドな設計のものがあります。



価格も3,000円前後と手頃で、フックなどの付属品も充実しているため、買ってすぐに調味料やキッチンツールを整理できます。
無印良品で揃える清潔なキッチン
無印良品は、コンロ隙間専用の商品は出していませんが、その汎用性の高さが逆にDIYユーザーから絶大な支持を得ています。特に最強の相棒となるのが、「ステンレスワイヤーバスケット」シリーズです。
このバスケットは、その名の通り高品質なステンレス(18-8ステンレスなど)で作られており、錆びにくさは折り紙付きです。網目構造なので、万が一油が跳ねても底に溜まることがなく、そのままシンクで丸洗いできます。
持ち手を内側に倒すとスタッキング(積み重ね)ができる仕様になっているため、コンロ横に15cm以上のスペースがあれば、これを2段、3段と重ねるだけで、通気性抜群のスパイスラックが完成します。
また、コンロと冷蔵庫の間に20cm〜30cmほどの隙間がある場合は、「ステンレスユニットシェルフ」を導入するのも手です。



ただし、背の高い家具を置く場合は、地震対策として転倒防止金具や突っ張りパーツの併用が必須となります。
ぴったりサイズに自作するDIY


「市販品ではどうしてもサイズが合わない」「数センチの隙間も無駄にしたくない」という場合は、DIYでジャストサイズのカバーを作るしかありません。しかし、前述の通り木材むき出しはNGです。ここでは、安全な自作隙間カバー(リッド)の構造をご紹介します。
安全な耐熱隙間カバーの作り方
MDF材やSPF材を、埋めたい隙間の幅と奥行きに合わせてカットします。
熱源(コンロ)に面する側面と、天面に、厚さ0.5mm以上のアルミ板またはステンレス板を強力両面テープで貼り付けます。これにより、輻射熱を反射し、木材への着火を防ぎます。
さらにデザイン性を高めたい場合は、天面にモザイクタイルを貼るのもおすすめです。タイルは耐熱性が高く、熱い鍋を一時的に置く鍋敷き代わりにもなります。
もしリメイクシートを使う場合は、必ずパッケージの裏面を確認し、「耐熱」や「アルミ蒸着層あり」と記載されているものを選んでください。



一般的な塩化ビニル製のリメイクシートは、熱で縮んで剥がれたり、溶けたりする可能性があるため使用できません。
おしゃれに空間を活用するアイデア
最後に、隙間を単なる埋める場所から、料理が楽しくなる「コックピット」へと進化させるアイデアです。コンロ横のラックに、よく使うお玉やフライ返しをS字フックで吊り下げたり、お気に入りのスパイスボトルを並べたりすると、見た目もカフェのようにおしゃれになり、調理の動線も短縮できます。
ただし、ここには落とし穴があります。
コンロ横に出しっぱなしにしている調味料や道具は、常にオイルミストを浴びている状態です。一見きれいに見えても、触るとベタベタしていることはよくあります。
見せる収納を維持するには、「毎日使うものだけを置く」のが鉄則です。毎日使って洗うツールなら油汚れが蓄積しませんし、調味料ボトルも頻繁に手に取る際にサッと拭く習慣がつきます。たまにしか使わない道具やスパイスは、迷わず引き出しや扉の中にしまいましょう。



これが、おしゃれさと清潔さを両立させる唯一の秘訣です。
【総括】コンロ横の隙間を埋める最適解
コンロ横の隙間を埋めることは、毎日の掃除ストレスから解放され、限られたキッチンスペースを有効活用するための素晴らしい手段です。しかし、そこには常に「熱」というリスクが潜んでいることを、忘れてはいけません。
今回の重要ポイント
- 安全距離の死守: コンロ側面15cm以内は「危険地帯」。可燃物を置かず、置くならステンレスやスチール製を選ぶ。
- 科学的な素材選び: アルミはアルカリ洗剤で腐食する。メンテナンスフリーを目指すならステンレス(SUS304)一択。
- 排気口は命綱: グリルの排気口は絶対に塞がない。可動式のカバーで安全を確保する。
- DIYは不燃化が鍵: 木材を使うなら金属板で覆う。プラダンなどの熱に弱い素材はコンロ横では絶対に使用禁止。
たかが数センチの隙間ですが、そこをどう扱うかでキッチンの安全性と快適性は劇的に変わります。



ご自宅の熱源タイプ(ガス/IH)やライフスタイルに合わせて、最も安全で管理しやすい方法を選んでくださいね。
【参考】
>>コンロに油をこぼした際の正しい対処法と掃除のポイントとは!
>>コンロ周りの収納が危ない理由と安全に使うための収納術とは!
>>賃貸でコンロがないのはなぜ?その理由と対策を分かりやすく解説
>>コンロでマスキングテープは燃える?安全な使い方と注意点を解説
>>ガラストップコンロが割れた場合の火災保険適用手順やポイントとは?
>>コンロがガス臭い時の原因って?安全対策と適切な使用方法を徹底解説
>>コンロ前のガラスパネルで後悔しないために!ポイントと対策を解説
>>コンロ排気口カバーの100均取り扱いって?汚れ防止対策も徹底解説
>>IHコンロの寿命はどれくらい?修理や交換時期と長持ちさせる秘訣
>>コンロに水をこぼした時に点火しない原因…NG対応と安全な対処法
















